書籍『刑事裁判のいのち』(3) 筆者:H・O
2013年10月28日
前々回前回のつづき>

 本書の最終章は木谷明・元裁判官による、「死刑は本当に必要なのか」です。
 木谷さんは「私は、刑事裁判に関する根本的な問題は、冤罪問題と死刑問題であると考えています」と述べ、死刑問題についての見解を語ります。
 木谷さんはまず、死刑は憲法が禁止する「残虐な刑罰」にあたるかどうかについて、これまで死刑を合憲としてきた最高裁の判例の疑問点を指摘します。そして、死刑が存置される理由となっている、@人は死刑の威嚇によって凶悪犯罪を思いとどまっている=威嚇力・抑止力論、A人を殺した者は、それと同じ苦しみを味わって当然だ=被害者(報復)感情の満足論、それぞれについて冷静にその問題点を分析し、そして死刑の問題点(消極面)を明らかにします。そこでは、冤罪なのに死刑が執行されてしまうような、そんなとりかえしのつかないことはやってはならない、実際にそのようなことがある、という主張が強調されます。
 木谷さんは、裁判員制度が導入され市民が死刑の判断に直面するようになった今、死刑についてもより深く考えるようになっていって欲しいとの期待を述べます。
 
【書籍情報】
2013年8月、法律文化社から刊行。著者は元裁判官・木谷明さん。定価は本体1,900円+税。