書籍『刑事裁判のいのち』(1) 筆者:H・O
2013年10月14日
 元裁判官・木谷明さんによる刑事裁判についての市民向け「啓蒙書」です。その第一章「刑事裁判の役割」は木谷さんが中学生に対して行った講演録です。
 木谷さんは刑事裁判の目的は、真犯人を処罰して社会の秩序を安定させること、無実の人を有罪にしないこと、この二つだと述べ、その上で後者についてより重視すべきという考えを明らかにします。そして、「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則の意味と重要性を語ります。また、無実の人が有罪にさせられることのないよう法律に定められている自白法則、伝聞法則などについて説明しています。
 木谷さんは刑事裁判に関わる重要な用語の意味と趣旨を中学生にもわかるよう、噛み砕いて伝える努力をしています(それでもまだちょっと難しいかもしれませんが…)。大人の再復習にも役立つ内容となっています。というか、「疑わしいときは被告人の利益に」ということの意味と趣旨がいまだ社会に十分には浸透していないとすれば、大人もそこから学び直す必要があると思われます。黙秘権はなぜ保障されるのか、などを誰もが語り合えるようにしたいものです。

<続く>
 
【書籍情報】
2013年8月、法律文化社から刊行。著者は元裁判官・木谷明さん。定価は本体1,900円+税。