書籍『誰が法曹業界をダメにしたのか』(その2) 筆者:H・O
2013年8月26日
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 本書は法曹界がいかにダメなのかを明らかにしていますが、「弁護士のどこがダメなのか」(第三章)では、国際化と言う面で論を展開しています。ここでは、TPPへの参加が弁護士の国際化へも大きな影響を及ぼそうとしている中で、多くの弁護士と弁護士会が“内向き”な姿勢にとどまっている問題点を指摘しています。いま少なくない弁護士は、海外の弁護士は日本の法律事務所のパートナーにはなれないと主張しています。弁護士が弁護士以外の者と提携することを弁護士法72条が禁止していることがその根拠とされていますが、筆者の岡田和樹弁護士は日本の弁護士の多くは国際化に向き合っていないと批判しています。
 本書第四章は法科大学院や司法試験の制度の問題点を指摘しています。この章の筆者・斎藤浩弁護士は、法科大学院制度の理念を守るべきと主張しつつ、司法試験合格枠を削減することの問題点を指摘します。いま弁護士会が若手の就職難などを理由に司法試験合格者枠の削減を唱えていますが、斎藤弁護士は、少なくない弁護士は実は自分の生活のために主張していると言い切り、強く批判します。また、弁護士が裁判所や政府などに依拠せずに自ら弁護士養成をしていく気概に欠けていることも指摘し、法科大学院の場で研究者教員とともに法曹養成にあたる重要性を唱えます。

<続く>
 
【書籍情報】
2013年8月、中央公論新社から中公新書として刊行。著者は岡田和樹氏・斎藤浩氏(いずれも弁護士)。定価は777円(税込み)。