論稿「被害者救済に背を向け、問われる司法の『不正義』」 筆者:H・O
2013年7月15日
 「カネミ油症新認定訴訟」第一審判決の問題点を明らかにする論稿で、雑誌「世界」2013年6月号に掲載されたものです。
 カネミ油症事件はカネミ倉庫が製造・販売した食用油に毒物が混じっており、その油を使った食べ物を食べた人たちが食中毒を起こした事件で、1968年、西日本一帯に多くの被害者が出ました。
 カネミ油症被害者の多くは被害者としてなかなか国に被害者として認定されず、ようやく2004年に定められた認定基準で少し被害者として認定される人が広がりました。その被害者たちが中心にカネミ倉庫を相手どって損害賠償を求めていたのです。
 ところが、第一審判決(2013年3月21日、福岡地裁小倉支部)は被害者である原告全員を敗訴としました。その論理は、発症した時から長期間訴えなかったのだから、もう遅い、ということでした。
 しかし、ほとんどの被害者は2004年まで、国から被害者として認められなかったのです。また被害者の中には何年も経過した後に症状が現れた人もいます。差別されることを恐れて被害者であることを伏せていた人も多くいます。裁判所は、そうした人たちに、いまごろ裁判を起こしても駄目だと言っているようなものです。
 筆者であるジャーナリスト・明石昇二郎さんはこのようにこの裁判の問題点を指摘しています。裁判所・司法のあり方を考える裁判でもあると言えるでしょう。