書籍『日本人と裁判 −歴史の中の庶民と司法』(その3) 筆者:H・O
2013年5月27日
前回前々回からの続き>

 紛争は最終的に裁判で解決する、という近現代と違い、中世社会では、やられたらやりかえすことが広く容認されていました。しかし、それでも紛争が泥沼化することのないようなルールづくりが徐々にすすめられました。それは、幕府や守護の権力の間隙をぬって築かれた地域の自治組織の「掟」などにも見てとれます。そして、裁判そのもののルール化も徐々に広がりました。鎌倉時代には司法制度の整備がすすめられました。
 一方で、この時期、司法の役割を制限するような動きもありました。幕府の御家人が売買や質入れなどによって借金まみれになることを防ぐ目的で徳政令が発せられましたが、「永仁の徳政令」(1297年)には、貸付に関わる訴訟や再審理を請求する訴訟を認めないことも盛り込まれました。
 筆者・川嶋四郎教授は、中世期の司法制度整備の経緯やその紆余曲折をいろいろな素材を示しながら綴っています。

<つづく>
 
【書籍情報】
2010年、法律文化社から刊行。著者は川嶋四郎・同志社大学教授。定価は本体2,500円+税。