書籍『日本人と裁判 −歴史の中の庶民と司法』(その2) 筆者:H・O
2013年5月20日
前回からの続き>

 鎌倉時代の頃の裁判は、@所務沙汰、A雑務沙汰、B検断沙汰の3種類に分けられていました。所務沙汰は土地関係訴訟、雑務沙汰はいわば純粋な民事訴訟、検断沙汰は刑事訴訟でした。
 この時期には民事訴訟制度が急速に発展した、とされます。北条氏が土地をめぐる争いの解決に熱心で、1232年に「御成敗式目」が制定されました。
 当時の訴訟は遅延することが多く、その迅速化が課題になっていたようです。その一方で、当事者が互いに3回にわたって弁論の機会が保障される「三問三答」の原則がありました。また、和解や不服申し立ての制度の確立・整備もすすんだようです。裁判の公平さがこのようにして確立していったのです。
 筆者・川嶋四郎教授は、当時の文学作品を紹介しながらこうした司法制度の改革の経過を明らかにしてくれています。

<つづく>
 
【書籍情報】
2010年、法律文化社から刊行。著者は川嶋四郎・同志社大学教授。定価は本体2,500円+税。