書籍『日本人と裁判 −歴史の中の庶民と司法』(その1) 筆者:H・O
2013年5月13日
 古代、事件についての判断は、手を熱湯に入れて、その手の爛(ただ)れ具合によって決められた、と言われます。しかし、やがて日本にも「法の支配」という思想に通じる観念が生まれます。
 紀元604年、推古天皇の摂政となった聖徳太子は「一七条憲法」を制定しました。これはこんにちの近代憲法とは性格を異にするもので、「和を以て貴しとなす」との言葉に象徴されるように道徳的な訓戒ではありましたが、そこには公明正大な訴訟運営をすべきことも書かれました。聖徳太子には“仏の前においては人は平等”という観念があったのです。
 いまに残る日本の最初の法典は「大宝律令」(701年)です。「律」は刑罰についての法典で、「令」は行政組織の大要などについて定めた法典です。
 このように、著者・川嶋四郎教授は日本における「法の支配」と司法制度を歴史的に辿ってくれています。司法というものを歴史的な視点から考えさせてくれます。

<つづく>
 
【書籍情報】
2010年、法律文化社から刊行。著者は川嶋四郎・同志社大学教授。定価は本体2,500円+税。