論文「『違憲の府』と最高裁」 筆者:H・O
2013年5月6日
 最高裁は、いま衆議院も参議院も「違憲状態」にあると判断し、国会の選挙制度の是正を求めています。ところが国会内での政党間の協議が難航し、ようやく0増5減を内容とする緊急是正法が成立しましたが、2012年12月の選挙は緊急是正法に基づく区割りが間に合わず、「違憲状態」のまま実施されました。この選挙は無効であると、いま全国各地で「一票の格差」訴訟が提起されています。そして、各高等裁判所が選挙を「違憲」または「違憲状態」と判断し、うち2件では選挙無効の宣告がなされました。早ければ今秋にも最高裁で判決が出されると思われます。
 最高裁の判断を国会が無視する事態が続いているのです。司法とは何なのかが厳しく問われなければなりません。
 筆者である高見勝利教授(憲法学・上智大)は過去の最高裁の判例なども省察しながら、最高裁では今回の選挙を無効と判断すべき、とします。これまで裁判所は、「違憲」という判断をする場合でも、いろいろな「事情」を考慮して選挙じたいを無効とすることは避けてきた(「事情判決」)わけですが、今回その理屈は通用しないことを論理的に説明しています。
 最高裁の判断を平然と無視するような国会議員を国民は選んではならないでしょう。この論文を読んで、司法というものの役割・権威・あり方についての国民的な議論を広げていかねばならないと、あらためて思いました。
 この論文は雑誌「世界」(岩波書店)2013年3月号・別冊に収載されています。