書籍『原発と裁判官』(その2) 筆者:H・O
2013年4月22日
前回からの続き>

 本書のサブタイトルは「なぜ司法は『メルトダウン』を許したのか」です。前回、裁判官たちがどのような感覚・問題意識で原発関係の裁判を担当していたのか、その率直なところが本書で記されていることを紹介しましたが、本書では、司法が「メルトダウン」を許した背景の分析が試みられています。具体的には、裁判官が最高裁事務総局によって人事や給与・任地その他で“統制”されていること、会同という裁判官の会議や最高裁の調査官制度が裁判内容の“統制”の温床となっていること、法曹一元ではない職業裁判官制度も見直されるべきこと、などが綴られています。
 本書では、3.11後、原発関係の裁判への裁判所の対応と裁判官の意識が変化しつつある状況も明らかにしています。「原発安全神話」を信じていた国民の意識が変わっていくことによって裁判所も行政追随の姿勢を変えていくだろうとの展望も紹介されています。

<おわり>

【書籍情報】
2013年3月、朝日新聞出版から刊行。著者は磯村健太郎氏と山口栄二氏(いずれも朝日新聞オピニオン編集部記者)。定価は本体1300円+税。

*当サイトでは以前、元裁判官による連続講演会の様子を紹介してきました。こちら。その講演録集を法学館憲法研究所も取り扱っていますので、あらためてご案内します。こちら