論文「法教育と裁判員制度学習 ― “基本原理”と“ツール”からの考察」 筆者:H・O
2013年4月8日
 中学校教員の中平一義さんが授業で模擬裁判員裁判を実施した経験を紹介しつつ、そのあり方について問題提起しています。
 授業では、唐突に別のクラスの教員が教室に入り、その1時間後に生徒たちにその時の様子を証言させたそうです。生徒たちは1時間前の出来事についても正確に記憶していませんでした。そのことを確認し合いながら、裁判における目撃証言にも曖昧さがあるということ、したがって、裁判における事実認定は慎重に行われるべきことを生徒たちに伝えたとのことです。事実認定ということの重要性と難しさを生徒たちに説得的に理解してもらう、優れた工夫・教育実践だと思います。
 筆者の中平さんは、裁判員制度の教育は、その“基本原理”と紛争解決のスキルを身につける、いわば“ツール”を学ぶという両面から、そのあり方、方法が検討されるべきだと述べます。裁判員制度についての学校での教育が広がってきていますが、生徒たちに何を、どのように身につけてもらうのか、ということを深く考えて教育すべきことを唱えています。重要なことです。
 「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則の趣旨などは、いま生徒たちにどのように理解されているのでしょうか。こうした根本的な問題が正しく生徒たちに認識されるような教育が進められること願ってやみません。
 この論文は全国民主主義教育研究会編『民主主義教育21 Vol.7 生徒と学ぶ憲法教育』(2013年4月、同時代社)に収載されています。