論稿「加害者主導の賠償は変わるか」 筆者:H・T
2013年3月11日

 3.11から早くも2年経ちました。福島原発事故関連では、原発の運転停止等を求める訴訟、東電の経営陣の責任を問う株主代表訴訟、事故の被害者による損害賠償訴訟などが各地で提起されています。本論稿は、様々な訴訟の全体像と今後の展望を提示しています。

 筆者は、中心となる損害賠償問題は「綱引き」の状態にあるが、加害者主導で進められてきたと説明しています。法律では原子力損害賠償紛争審査会が賠償の「一般的な指針」を策定することになっていましたが、東電は経産省とともに、その権限を喪失させました。さらに東電と経産省は、「事故収束」を前提に、賠償打ち切りの方向性も明らかにしました。総じて、加害者側の主導による賠償枠組みの策定が基本的な構図になっています。

 しかし、昨年末以来、各地で避難者などが集まり、賠償や原状回復の提訴も起されつつあるなど、本格的な対抗の動きを見せ始めたというのが筆者の見方です。

 ただ、加害者主導で問題の収束を図る構図は水俣病事件で失敗した「見舞金契約」と類似する側面があると警告しています。

筆者は除本理史氏(大阪市立大学大学院経営学研究科准教授)。週刊金曜日2013年3月1日号所収。