講演・対談録「裁判と憲法 −裁判員制度・死刑制度を考える」 筆者:H・O
2013年2月25日

 標記のテーマで村井敏邦教授(大阪学院大・刑事法)が講演し、その後浦部法穂・法学館憲法研究所顧問(=神戸大学名誉教授)と対談した記録です。
 村井教授は国民の司法参加は陪審制度として実現すべきだったとの立場を明らかにしながら、裁判員制度のスタートを全否定するのではなく、裁判制度の改革への可能性を模索しつつ、その問題点を克服していくべきとし、制度の改革課題を冷静に分析・提起しています。
 裁判員制度における評議の多数決制、良心にもとづいて裁判員への就任を拒否する権利が認められていない問題、裁判員に課せられる守秘義務のこと、裁判員には死刑判断も課せられていること、等々を指摘しています。それらは、欧米や韓国での国民の司法参加の状況や日本での陪審制度の経緯なども紹介しながらの説明で説得的です。
 浦部法穂氏との対談は刺激的です。裁判員を「強制」されることは憲法が禁止している「苦役」にあたらないのかが検討されつつ、市民が積極的に司法に関与すべきことなどが語られています。
 裁判員制度の囲碁と改革課題を考える上で有意義な講演・対談録です。
 これは「法学館憲法研究所報」第8号(2013年1月、法学館憲法研究所が発行)に収載されています。