論文「裁判員制度立法過程の検討序説
−裁判員制度の必要性はどう論議されたか」(その2)
筆者:H・O
2012年11月5日

前回からの続き>

 1999年、内閣に司法制度改革審議会が設置されました。この審議会で、日弁連は多くのえん罪を生んでいる裁判所の改革が必要だとし、国民の司法参加の必要性を主張しました。最高裁や法務省は国民の司法参加についての態度を当初は明らかにしませんでした。審議会では弁護士出身の委員や労働団体・消費者団体出身の委員が国民の司法参加を主張し、審議会は最終的に裁判員制度というかたちで国民の司法参加を実現する意見書を取りまとめました。しかし、裁判官や検察官出身の委員などは、それまでの裁判所や裁判官の裁判には基本的な問題点はないという立場を貫いたため、国民の司法参加の目的が明確になりませんでした。
 こうして裁判員制度ができて国民の司法参加が実現しましたが、その目的は裁判官による裁判を改革するという弁護士会などの主張が確認されることにはなりませんでした。
 筆者の宮本康昭弁護士はこの論文で、司法制度改革審議会などでのこの問題の審理の経過を丹念にたどりながら、裁判員制度が実現したことを基本的に評価しつつ、その問題点を明らかにしています。

 
【論文情報】
筆者は宮本康昭氏(弁護士)。渡辺洋三先生追悼論集『日本社会と法律学一歴史・現状・展望』(2009年、日本評論社)に所収。