書籍『裁判員と死刑制度』(その3) 筆者:H・O
2012年8月20日

 前々回、前回と続けて、この本に収められた講演録を次のように紹介しました。
  「裁判員制度とこれからの課題」伊藤和子弁護士
  「死刑制度はいらない」寺中誠・アムネスティインターナショナル・日本事務局長(当時)
 今回は上記2人の対談録「日本の刑事司法を考える」を紹介します。

 2人は、日本では起訴された被告人の99%以上が有罪とされていますが、そこには冤罪の被害者が少なくなく、その中には死刑を言い渡される人もいます。無実の人を罰してはならず、ましてその人の命を奪ってしまうような司法は抜本的に改革されるべき、という点で両者の立場は全く一致しており、取調べの可視化(録画・録音)や証拠の開示の必要性、取調べ受忍義務の問題点などが語られています。
 その上で、それぞれの問題意識から、日本の刑事司法の問題点、その抜本的な改革がすすまない背景にある日本社会の問題状況、裁判員制度導入への期待と改革課題、なども提起されています。伊藤弁護士はアメリカの刑事司法の状況も紹介しながら、日本での改革課題などを問題提起し、寺中さんは、被告人の「必罰化」「厳罰化」を求める国民意識などに対する問題提起をしています。

 
【書籍情報】
2010年、新泉社から刊行。著者は伊藤和子弁護士と寺中誠・アムネスティ・インターナショナル日本事務局長(当時)。定価は1,200円+税。