書籍『誤認逮捕 −冤罪は、ここから始まる』 筆者:H・O
2012年2月13日

 警察官が誤って無実の人を逮捕するようなことはどのくらいあるのでしょうか。人間誰しも過ちを犯すものですから、それを皆無にすることは困難でしょう。しかし、日本の刑事司法は「人質司法」とか「調書裁判」だと言われ、ひとたび警察に逮捕されると犯行の「自白」を迫られ、その調書によって、無実の人が裁判で有罪になることがあります。こうして冤罪の悲劇の多くが誤認逮捕から始まっているのです。
 この本は、誤認逮捕が減ることを願う立場からですが、警察官の捜査方法にもう少し幅広い裁量権を与えるべきと述べています。筆者はこの点には同意しかねますが、警察がどのような誤認逮捕をしているのか、その多くの具体例を紹介していることは重要だと考え、紹介するものです。
 犯行を見たという人の不正確な目撃証言を警察官が鵜呑みにして逮捕してしまったケース、人を陥れようしている人の証言を警察官が信じてしまったケース、あるいは知人を庇おうととして他人に罪をなすりつける証言を信じてしまったケース、等々が紹介されています。警察官がまったくの勘違いで逮捕したり、データの照合を間違うといった単純ミスが原因で逮捕するケース、犯行との因果関係が薄い証拠に飛びついて逮捕するケース、などもあります。逮捕された人をただちに悪人視するマスコミ報道と人々の感覚がありますが、警察が少なくない誤認逮捕をしている現状も伝えられる必要があるでしょう。
 人はなぜ虚偽自白をするのか、警察官は逮捕した人からどのように「自白」を引き出すのか、についての記述にもリアリティがあります。

 
【書籍情報】
2011年、幻冬舎から幻冬舎新書として刊行。著者はノンフィクション作家・久保博司氏。定価は本体780円+税。