書籍『憲法裁判の現場から考える』 筆者:H・O
2012年1月30日

 2001年の司法制度改革審議会意見書にもとづいて様々な制度改革が行われましたが、それが実際の裁判の内容にどのように影響しているのでしょうか。この書はこれまで注目された憲法裁判の具体的状況を紹介するものですが、第一章の奥平康弘氏(東大名誉教授)の講演録などは最近の憲法裁判の「変化」についても分析しており、司法のあり方と今後について考えさせてくれるものです。
 憲法に関わる裁判はこんにちの日本国憲法が誕生して以降さまざまなかたちで展開してきましたが、本書におさめられた裁判の現場からの報告には臨場感があります。そして、人権の保障を求める当事者と弁護士・裁判官の努力には感動を覚えます。水島教授(早大)は本人からの聞き取りで福島重雄裁判長が長沼ナイキ基地訴訟で自衛隊違憲判決を出した思いなどを紹介しています。朝日健二さん・新井章弁護士は、それぞれ生存権保障、教育の権利の確立に大きな貢献をした、朝日訴訟、教科書検定違憲訴訟(家永訴訟)を振り返り、その意義を語っています。喜田村洋一弁護士は在外邦人選挙権制限違憲訴訟の経過と成果を語っています。人々が裁判を通して権利の確立を実現しうることを教えてくれる書です。

 
【書籍情報】
2011年12月、成文堂から刊行。編者は水島朝穂・早大教授、金澤孝・早大講師。
定価は2,100円(本体2,000円)。