論稿「『陸山会事件』とは何だったのか − 問われる検察改革のゆくえ」 筆者:H・O
2011年10月3日

 9月26日、東京地裁は、民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる事件で、元秘書3人に対し政治資金規正法違反の有罪判決を言い渡しました。判決は、公共工事をめぐる小沢氏の事務所とゼネコンとの癒着を認定するものでもあり、小沢氏の“金権体質”が糾弾されることになりました。
  この論稿はこの判決が出される直前に発行された雑誌「世界」2011年10月号に収載されたものです。筆者のジャーナリスト・江川紹子氏はそもそも陸山会事件とは何だったのかを整理しつつ、検察や裁判所のあり方について問題提起しています。この裁判では検察側が証拠請求した被告人の供述調書の多くが取り調べで検察官による供述の誘導があったとして採用されませんでした。江川氏はこうした裁判の経緯を示しながら、検察はこれまでの無理な取り調べや誘導をあまり反省していないと警告します。
  企業と政治の癒着は許されることではありませんが、一方で裁判の原則は守られなければなりません。つまり、検察の主張・立証に無理があり、合理的な疑いが残る場合、被告人は無罪とされなければならないのです。被告人はさっそく控訴し、この裁判は続きます。検察と裁判所の今後の動向を注視していく必要があります。