書籍『検事総長 −政治と検察のあいだで』 筆者:H・O
2011年8月22日

 人を起訴できるのは、基本的に検察官だけです(ただし、2009年から、検察官がある人を不起訴処分にしても検察審査会が「起訴相当」の議決を2回するとその人は起訴されるようになりました)。検察官のその権限は絶大です。冤罪は防がねばなりませんが、検察官には、社会正義に反して法に触れた人を、法に則って適切に起訴し、必要な求刑をしてもらわねばなりません。権力を握る政治家や官僚などに対しても手を緩めてもらってはなりません。過去検察官は様々な疑獄事件で大きな役割を果たしてきたと思われますが、果たして十分な仕事をしてきたのでしょうか。起訴すべき人を見逃したこともあるのではないでしょうか。一方で、無実の人びとの起訴も繰り返してきたことも事実であり、そこは厳しく検証してもらわねばなりません。
  検察官のトップは検事総長です。この本は歴代の検事総長の仕事を歴史的に追うことによって、検察の役割を考えさせてくれます。検察の権限は絶大であるがゆえに、政治家や役人、あるいは警察、そして「裏社会」などとの間には凄まじい「攻防」があるように思われます。それは市民からは見えづらいものです。市民は意識的に検察と司法に目を向け、できるだけその動きをチェックすべきでしょう。そのために検察の実際の歴史を振り返ってみることも有益だと思われます。

 
【書籍情報】
2009年、中央公論新社から刊行。著者は共同通信のメディア局編集部次長などを務めた渡邉文幸氏。定価は本体900円+税。