論文「言論弾圧事件で問われる最高裁の役割」 筆者:H・O
2011年6月6日

 2008年、最高裁は自衛隊イラク派兵に反対するビラの自衛隊宿舎での配布を邸宅侵入罪で問うことは憲法21条違反にはならないとしました(立川の自衛隊ビラ事件)。2009年には、マンションでのチラシ配布を住居侵入罪で問うことも憲法21条違反ではないとしました(葛飾ビラ配布事件)。こうして最高裁は国民の表現の自由を規制してきています。
  裁判所は公務員の政治活動も規制してきていますが、この件では、堀越事件と世田谷事件という、ほぼ同様の事件で東京高裁の判決が分かれ、今後の最高裁での判決が注目されています。焦点は、公務員の政治的行為をめぐる猿払事件最高裁判決が見直されることになるかどうかです。
  加藤健次弁護士はこうした言論弾圧事件をめぐる最近の裁判所の判決を整理した上で、表現の自由や思想良心の自由という分野で最高裁が人権擁護の「砦」としての役割を果たすべきことを訴えています。

 
【論文情報】
「法と民主主義」2011年5月号に収載。筆者は加藤健次弁護士。