報告「市民が求めた司法改革と今実現すべき緊急の課題」 筆者:H・O
2011年5月9日

 日本民主法律家協会が本年10月1日に司法改革についての研究集会を予定し、その第1回プレシンポでの高見澤昭治弁護士の報告です。
  高見澤弁護士は日本民主法律家協会での司法改革についての研究と議論の経過、映画「日独裁判官物語」(1998年)の製作・上映運動などを振り返りながら、政府に設置された司法制度改革審議会がとりまとめた意見書(2001年)の評価を述べました。それは「新自由主義的な立場で、グローバリゼーションに対応する司法制度に改革することを基本にしており、官僚司法制度を堅持しながら、限定的に市民の司法参加を導入するというもので、市民の求める司法改革とはほど遠いものといわざるを得ない」というものです。
  続いて、政府の司法制度改革審議会に対抗して設置した「司法改革市民会議」の提言「国家と財界のためでなく、国民のための司法改革を」(「法と民主主義」2001年1月号に掲載)の内容を紹介しました。それは「司法改革の基本理念とその方向」は「だれでも安心して暮らせる、“人間が尊重される社会”の実現」であるとし、「市民にとって望ましい裁判官・裁判官制度」として陪審制の導入などを求めるものでした。
  高見澤弁護士は最後に、現時点で特に重要な緊急課題についての私見として、「(1)最高裁事務総局の権限縮小と裁判官会議の活性化、(2)弁護士経験者による裁判官の大幅増員と判事補制度の廃止、(3)裁判官の給与体系の平準化と無意味な転地・転任の原則廃止、(4)民事裁判(特に行政訴訟・労働裁判・国家賠償訴訟)への市民参加、(5)庶民が躊躇なく弁護士を利用することができる公的資金の大幅な導入」を提案しました。

 この報告は日本民主法律家協会発行の「法と民主主義」2011年4月号に掲載されています。