書籍『司法官僚 ― 裁判所の権力者たち』 筆者:H・O
2011年2月21日
 日本国憲法のもとで、戦後司法権が行政権から独立することになり、同時に個々の裁判官が独立して職権を行使することになりました。しかし、その理念は早い時期から形骸化していくことになりました。裁判所が行政府や立法府に対して毅然として物を申すことが少なくなり、一方で裁判所は行政権からの独立を確保するため、最高裁が司法と個々の裁判官への「統制」を強めることになったのです。それを「司法官僚」が中心的に担うようになり、「司法官僚」育成の強固なシステムができあがりました。個々の裁判官が最高裁の判断に従順に従う傾向が強まるようになっていきました。
  本書はその実態を実証的に解明しました。そして、21世紀に入って進められた裁判所の改革(裁判官の人事評価システムについての新しいシステム、裁判所委員会制度や下級裁判所裁判官指名諮問委員会制度、等々)の内容と問題状況についても分析しています。
  著者の新藤宗幸・千葉大教授はこんにちの裁判所・裁判官の「統制」のシステムの改革の必要性を唱え、そのために裁判所情報の公開を求める市民のとりくみなどについて問題提起します。
  裁判所をめぐる問題状況を学び、その考える上で、ぜひ読んでおきたい書です。
 
【書籍情報】
2010年8月、岩波書店から岩波新書として刊行。著者は新藤宗幸・千葉大教授。定価は819円(本体780円+税)。