裁判員裁判のインパクト  
2014年11月24日
シンポ「裁判員裁判のインパクト」(11/3)
 シンポジウム「裁判員裁判のインパクト −実施5年後の現状と今後のあり方−」が11月3日、専修大学で開催されました。集会の主催は専修大学法学部です。
 第1部では、飯考行専修大学法学部准教授が「裁判員裁判のポテンシャル −大学を活かした展開の提案」と題して、裁判員に関するアンケート調査などにみられる傾向を解説するとともに、裁判員経験者2名の経験内容を報告し、そのなかで、被告人を犯罪に向かわせた背景にある家庭環境を知り、裁判員として様々な思いを巡らせたことなども語られました。
 なお、アンケートや各種データから、裁判員裁判への市民の関心は減少傾向にあり、最高裁は全国地裁に、裁判官がいろいろなところで出張講義を行うなどの広報活動の強化を呼びかけていることも紹介されました。加えて、裁判員裁判に積極的に係わる弘前大学や専修大学での取り組みへの参加の呼びかけがありました。
 次に、弁護士3年目を迎えた山本衛弁護士が、10件の裁判員裁判の経験から、「裁判員裁判を担当して −社会へのインパクト」と題して、お話されました。それは、裁判の書面主義から口頭主義への移行、弁護にプレゼンテーション能力が求められるようになったこと、他の裁判でも、保釈をなかなか認めない人質司法や証拠開示に変化が生じていること、などでした。
次に、裁判員を経験した田中洋氏が、最高裁からの通知を受け取った時から刑の確定までの経過を説明し、それは自分を見つめなおす機会となり、「ベースの違う」人と徹底的に意見を出し合うことになったので「これが民主主議だ」と思った、ということを述べました。
 第2部のパネルディスカッションは、第1部の3氏に加え、裁判員経験者3名、臨床心理士、「裁判員ネット」会員2名によって行われました。
 裁判員経験者はその経験を概ね肯定的に捉えていますが、問題点も指摘しました。その一人は、「えん罪は起きると思った」と発言しました。自身が担当した裁判員裁判で有罪となった被告人はその後控訴したそうです。もし数年後にどこかで出会ったら、なんと答えていいかと思う、それが心理的負担だと述べました。
 市民の視点から裁判員制度の検証に取り組んでいる「裁判員ネット」の坂上暢幸氏は裁判員裁判の刑事裁判や社会への好ましい影響を解説しました。
 裁判員に選ばれたら、ぜひやって欲しいという意見に対して、臨床心理士の水野氏は、裁判員になるならないは自己決定が大事だと指摘しました。裁判員になった場合だけでなく、民主主義社会で一人ひとり求められている自己決定権の問題だと思いました。
(T.S)