子どもの学ぶ権利を守れ −朝鮮高校生「無償化」裁判  
2014年10月27日
 10月18日、朝鮮高校生「無償化」裁判支援集会「ヘイトスピーチはダメ!!でも朝鮮学校排除はいいの?」が東京都文京区・文京区民ホールで開催されました。集会の主催は、「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会」です。
 日本国内の高校や高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校などの各種学校に通う生徒には、「高校無償化法」(2010年施行)によって就学支援金が支給されることになりました。しかし、朝鮮学校は各種学校として認可されているにもかかわらず、そこに通う生徒にはこれが支給されませんでした。
 当時、民主党政権下で、拉致問題などを理由に支給反対論がありました。その年の11月には朝鮮民主主義人民共和国軍が延坪沖で韓国軍に対して砲撃を行い、民間人を含む死傷者が出た事件もあり、朝鮮高校無償化手続きは中断したままになりました。
 2012年12月、第二次安倍内閣が誕生すると、朝鮮民主主義人民共和国や在日本朝鮮人総連合会とも結びつきがあることを理由に朝鮮学校を対象外にすることを決めました。さらに、2013年2月には、支給の根拠となる「高校無償化法」法施行規則から朝鮮学校が該当する「ハ」を削除して、朝鮮学校を「高校無償化法」から排除しました(「ハ」に該当していた他の各種学校は、そのまま支給を継続)。
 これに対して、2013年1月から、大阪、愛知、広島、福岡で、朝鮮学校が原告となる、不指定処分の取り消しと「無償化」適用の義務付けを求める裁判(行政訴訟)と、生徒・卒業生が原告となる、「高校無償化」から排除されることによって生じた損害に対する裁判(国家賠償請求訴訟)が国に対して起こされました。そして、今年2月には東京で、東京朝鮮高校生「無償化」裁判が提訴されました。各原告・弁護団の主張内容は、それぞれが独自のものでありながら、連携し合っています。
 今回の集会では、東京弁護団の松原拓郎弁護士が、東京の裁判の4つのポイントを説明しました。@就学支援金の受給資格は生徒にあり、現状は子どもの学ぶ権利の侵害であること。A「ハ」の削除は、「高校無償化法」の趣旨からの逸脱であること。B「ハ」の削除は、政治的理由によるもので、「高校無償化法」の趣旨を根底から覆すもので、違法であること。C朝鮮高校は「高校無償化法」における指定の基準を満たしており、その生徒には、就学支援金を受給する資格があること。以上の主張のもと、裁判に勝つために争点を絞り早く解決をめざすことを強調しました。
 次に、阿部浩己神奈川大学法科大学院教授が、「国際人権法から見る『高校無償化』問題」と題して、いまだに克服されない人種主義に対して、国際人権法の重視が国際的潮流になっている展望を講演しました。
 この裁判に関しては、原告の主張・取り組みが国際機関への働きかけと連携していることが注目されます。集会では、今年8月、スイス・ジュネーブでの国連人種差別撤廃委員会に参加した、朝鮮学校出身のパク・カンリョンさんとキム・ウギさんのビデオが映され、2人から報告がありました。この委員会は、日本も批准しいる条約の下で設置されている委員会です。2人は、「高校無償化」制度から朝鮮高校除外問題と地方自治体による朝鮮学校への補助金停止問題を訴え、個別に委員会メンバーにロビー活動も行いました。その結果、国連人種差別撤廃委員会は、委員会での日本政府の説明に納得せず、朝鮮学校の除外と補助金の凍結・縮減の2点をやめるように勧告しました。前者は、2010年の勧告に引き続きのものです。政府は4年間、この勧告を無視し続けているのです。後者は、今回が初めての勧告です。
 国際的に通用しない日本政府の主張を司法はどう判断するのか。第4回口頭弁論は、2015年1月14日を予定しています。(T.S)