最高裁の改革が必要 〜 泉徳治・元最高裁判事が講演  
2013年5月27日
講演会「私の最高裁判所論」(5/25)
5月25日、元最高裁判事の泉徳治さんの講演会「私の最高裁判所論」が自由人権協会の主催により都内で開催されました。泉さんは、長く最高裁判所の調査官や事務総長などを歴任後2002年11月に最高裁判所判事に任命され2009年1月に退官し、現在は弁護士です。
最高裁判事時代は、基本的人権の擁護の観点から深い考察に裏打ちされた意見を述べ、36件の個別意見を書き、そのうち反対意見は25件に上り、最高裁における議論を活性化した気骨のある裁判官として知られています。

 泉さんはまず、明治憲法時代は司法大臣の監督下に裁判所と検事局が置かれ、裁判官も検事も協議会や研究会を一緒に持ち同じ「司法官」として一体感があり、新憲法制定後も両者は一種の同僚意識を受け継いだと述べました。裁判官の公職追放がなかったことも紹介されました。最高裁の誕生に当たっては、最高裁判事の人選が重大な問題となったが、細野長良氏ら司法の独立性を重視する候補者は全員選任されませんでした。

 最高裁は違憲審査機能も有するに至りましたが、現状のままでは有効にその機能を発揮できないとして次のような改革案を提言されました。システム上の強化策として、@違憲審査に特化した大法廷と法令違反審査に特化した小法廷の増加、A3名の憲法学等の公法学者の任命、B韓国の憲法裁判所にならい憲法調査官・憲法研究員の設置、C各裁判官に専属する調査官の設置等です。違憲審査機能を行使する際の問題点としては、裁判官はともすれば安易に「合理性の基準」に寄りかかりがちであるが、厳格な審査基準など裁判規範としての違憲審査基準を確立する必要があること、法律任せ・立法裁量任せからの脱却等です。

 次いで、自ら関与した反対意見の事例を多数紹介されました。裁判官の反対意見は、司法判断の内容を向上させることに貢献するとともに、司法判断及び法の発展を理解する一助になるとのことです。

 最後に、憲法が求める開かれた司法とするために、裁判官の増員(現在の定員は明治23年の1.88倍)、法科大学院で社会の需要に応える教育に集中するための条件整備、裁判員制度の見直し(被告人の選択制にすること)、国際水準化に向けた学者の支援の必要などを訴えました。

 泉さんは、6月5日に日本評論社から「私の最高裁判所論」を出版される予定です。講演の詳細については、是非本書をご覧ください。