養成すべき法曹の人数とは  
2009年11月2日
三澤英嗣さん(弁護士)
  平成13年6月12日付け司法制度改革審議会意見書では,「新制度への完全な切り替えが予定される平成22(2010)年ころには新司法試験の合格者数を年間3,000人とすることを目指すべきである。」とし,それを踏まえた2009年度新司法試験の最終合格者数は,当初計画では2500人から2900人の範囲とされていた。
ところが,上記計画とは異なり,2009年度合格者数は2043名となり,2008年度のそれさえ下回った。これは,平成22年の最終合格者3000名達成が不可能であることを示した明確な国家意思であると考えざるを得ない。そして,それと同時に,今回の国家意思は,要するに,「養成すべき法曹の人数は,毎年2000人程度である。」ことを示しているとも思う。
たしかに,平成22年の最終合格者3000名が適切なのかどうかは,私個人にはわからない。しかし,私には,それ以上にわからないことがある。それは,「毎年養成すべき法曹の数が2000人とすれば,その中から,裁判官,検察官の任官者が生まれ,残った人数の弁護士で,日本全国の人々に法的サービスを提供できるのか」という点である。もし,この法的サービスをまかなえないということになれば,弁護士以外の職業に,弁護士と同様の活動権限を付与せざるを得ない。
弁護士会では,最近,年1000人の合格者数でも良いという意見まで出ている。その方たちは,たとえば司法書士や行政書士に,訴訟代理権や交渉権も含めた法的サービスを提供する権限を付与することに賛成なのだろうか? いや,それも反対するというのか?
「養成すべき法曹の人数」を論じるときは,上記視点への対応も視野に入れて,論じるべきであろう。でないと,とても説得的な話しにはならないと思うのだが。
 
【三澤英嗣さんプロフィール】
早大法学部卒
平成8年弁護士登録
(元職)
東弁調査室嘱託、日弁連司法改革調査室嘱託、同法曹養成調査室嘱託、同法科大学院センター事務局長、渋谷パブリック法律事務所所属。
(現在)
北千住パブリック法律事務所所属。